kjohnのブログ

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『フォックスキャッチャー』 感想

 この前『フォックスキャッチャー』のレンタルが始まっていたので借りて観てみました。以下感想など。

 

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http://www.foxcatcher-movie.jp/

 

兄弟揃って金メダリストなのに兄だけが世間から評価されていて、弟のマーク・シュルツが全然世間に認知されていないのが悲しい。兄の代理で講演に行けば誰も興味なさげだし、講演料の支払いの時には名前を兄と間違えられる。そんなわけで兄へのコンプレックスが溜まりまくってるわけで(しかも兄のデイブ・シュルツはめちゃくちゃいい人なのもつらい。兄が所帯持ちで弟が独身なのもつらい)、今度のソウル・オリンピックでまた金メダルを穫って今度こそ世間に認められたい…と思っていたところなので、そこに大富豪に協力を申し出られたら弟からしてみればまさに渡りに船というやつで、そりゃあ誰でも喜んでOKすると思う。

 あまり夢の様な話を弟から聞いた兄が心配する素振りをしたのも実は逆効果だったような気がする。兄弟は幼少期から2人で過ごしてきて兄が父の代わりもしてきたので弟の事を心配するのは当然だと思うけれど、弟としてはこの時点で既に兄の助けを借りずに成功したいという思いもあった。

 

シュルツを援助するジョン・デュポンの場合、親がいなかったのシュルツと反対に母親が強すぎたことが問題だった。母親が好きな馬の趣味はジョンは嫌いでジョンが好きなレスリングは母親が嫌っている。さらに友人には母親からお金が渡されていたという過去があり、友人と呼べる人間はほとんどいないように伺える。ジョンがマーク・シュルツを呼んだのは友人が欲しかったからでもあったと思う。

 ジョンの、アメリカへのこだわりが伺える部分が幾つもあった。フォックスキャッチャーで、選手たちにやたらとアメリカの力を世界に見せつけろと激をとばすし、マークに読ませた自作のスピーチでは自身を博愛主義者と呼ばせていた。それから彼の異名の「イーグル」(鷹)はアメリカの国鳥である(ジョンがアメリカのメタファーだったりするのかな)。あとジョンが鷲鼻。ちなみに鷲鼻は英語でAquiline noseともいい、Aquilineは鷲のような、という意味らしい。

 ジョンのフォックスキャッチャーへの大きな原動力は母親と世間、とりわけアメリカからの認められたいという欲求で、母親が一度レスリングの練習を見に来たとき、急にジョンが急にコーチぶってチームを指導する姿を見せつけようとするシーンがある(でも内容が今更教わるまでもない基礎中の基礎で選手たちは引いてるし、母親もすぐ帰っちゃってかわいそう)。 

 

などなど考えながら、優秀な兄弟の弟と、財閥の御曹司という、どことなく似た境遇の2人に感情移入しながら観ていた。

最後の結末は悲しいとしか言い様がない。

 

あと本作中はBGMがほとんどないんだけど、そんな中で流れる2つの劇中歌はそのシーンと合っていてとても良かったです。